*就職先情報の非公開を希望する修了者については、割愛しています。
*博士課程前期修了者及び博士課程後期修了者を併せて掲載しています。
私は現在、福岡市内の女子少年院で法務教官として勤務しています。法務教官というのは、非行をした少年が入所する少年院や少年鑑別所に勤務し、更正のための矯正教育などを行う仕事です。私がこの仕事に就けたのは、福岡大学大学院法学研究科に進んだからと言っても過言ではありません。私は、そもそも学部生の頃は大学院に進むなど全く考えておらず、将来何になりたいかの希望も正直ありませんでした。それが、学部二年生のときにゼミの担任だった畠田公明教授に早期卒業制度を紹介していただいたことをきっかけに、その制度を利用して法学研究科へ進むことになったのです。
明確な目標もなく法学研究科で学び始めた私でしたが、自分がどんな仕事をしたいかを考えたとき、せっかく学んだ法律の知識を生かせたらいいなという漠然とした思いはあったので、自然と法律に関係するような職業を探すようになっていました。実際に今の仕事で生かせていると思うのは、条文の読み方、解釈の仕方や、判決文の読解力です。法務教官という仕事は、すべて法律の根拠の基に成り立っているので、今でも日常業務の中で法律を調べることは少なくなく(実際、大きく関わっている少年院法が平成27年に改正されたばかりです。)、また少年審判において少年院送致が決定されたときの文書などを読むこともあります。そんなときに、法学部及び法学研究科で身につけた考え方や文章読解力がとても役に立っていると感じます。法学研究科での専攻は商法でしたが、他にも刑法や民法、憲法などの法律について、法的な解釈や事例を広く深く学ぶことができました。
もう一つ、その漠然とした思いが法務教官という仕事に結びつくまでは、それまでの自分の興味・関心の対象を振り返ったときに、学部のときに学んだ少年法の授業が思い出されたことも大きかったと思います。その授業の中で、少年法の理念において非行をした少年に成人のように刑罰を与えるのではなく教育を施す理由は、少年に可塑性があるからだと教わったことがとても印象的でした。可塑性とは、粘土のように柔らかく作り変えられるという意味です。この可塑性というキーワードは、法務教官の仕事を続けていく上で今でも私の信念となっています。どんなに難しい少年であっても、可塑性、つまり改善可能性を信じることによって、諦めずに矯正教育を続けていけるのです。
そうして自分の進路の希望がはっきりしてきてからは、法学研究科の先生方に相談すると、同職種の現役の方に話をつないでくださり直接話を聞く機会をいただいたり、先生御自身が詳しい知識をお持ちで色々な話を伺えたりと、就職試験を受ける前後でも様々な面で本当にお世話になりました。
私のように、やりたいことと出会えていない人でも、やりたいことを見つけるための進学でもいいと思います。法学研究科の先生方は必ず力になってくださいます。安心して学びに来てください。